柳生 謙

11.オペレーション

久し振りの投稿です。

今月から「議論していきたいテーマ」について
一つ一つ取り上げていきます。

ストーリ立てた展開というよりは、あっちこっち寄り道しながら、
「生産準備へのERP活用」の方向に牛歩のごとく歩んでいきます。

コメントは随時入れていただいて構いませんし、
不明な点があればどんどんおっしゃってください。
上記テーマ以外の話題も歓迎です。

よろしくお願いいたします。



返信(16)

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  • さて、まずは「オペレーション」についてお話します。

    「議論していきたいテーマ」で述べましたように、
    「オペレーション」は生産活動との関係が深いと考えるからです。
    http://www.lexer.net/collective_wisdom/2015/10/post-20.php

    私自身、汎用コンピュータのオペレータ出身です。
    この場合の「オペレーション」は「操作」という意味ですね。
    どちらかと言えば「単純作業」に近い。

    一方、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)という場合の
    「オペレーション」は「事業運営、経営」に近い意味ですね。
    こちらは「単純作業」とは言い難い。

    私は中小企業診断士資格を所持していますが、
    診断士資格の試験科目に「運営管理」というのがあります。
    これは'Opeations Management'を和訳したものだと思います。
    以前の診断士試験科目でいうと、
    ・「生産管理」、「資材購買管理」、「生産情報システム」
    ・「仕入管理」、「店舗施設管理」、「販売流通情報システム」
    を統合した内容です。
    「単純作業」も含みますが、「事業運営」の意味合いもあります。

    本フォーラムではオペレーションを'Operations Management'の
    Operationsに近い意味で用いていきます。



  • オペレーションには「手術」とか「(軍事)作戦」という意味もあります。

    単純作業も含まれますが、高度なテクニックと経験と判断を要求される場面もある。

    「事業運営、経営」と同様ですね。

     

     

     



  • ここではオペレーションを2つの軸に分けて考えてみます。

    一つの軸は「業務プロセス」。

    以前に挙げた例でいうと、

    ・Order to Cash (販売業務プロセス)
     
    受注→出荷→販売請求→入金
    ・Procure to Pay (購買業務プロセス)
     発注→入荷→購買請求→支払
    ・Plan to Product(生産業務プロセス)
     計画→手配→製造→原価計算

    もう一つの軸が「プロダクト(製品・サービス)

    特に意識するのが生産形態。

    以前に挙げた例で言うと、

    1)受注生産

    ETO(Engineer to Order):個別受注生産
    MTO(Make to Order):繰り返し受注生産

    2)受注加工組立生産

    ATO(Assemble to Order):受注組立生産
    BTO(Build to Order):受注加工生産
    CTO(Configure to Order):受注仕様組立生産

    3)見込み生産

    MTS(Make to Stock)

    これらの生産形態により業務プロセスの順序が異なってきます。

     

     



  • 横軸に業務プロセス、縦軸にプロダクト(製品・サービス)。

    プロダクトは例えば生産形態を基準に、

    ・個別受注品
    ・繰り返し受注品
    ・受注組立品
    ・受注加工品
    ・受注仕様組立生産品
    ・見込み生産品

    と分けます。

    業務プロセスの順序が異なるというのは、
    例えば、受注と生産の前後関係だけみても、
    あるものは受注してから生産するパターンですし、
    あるものは生産してから受注するパターンです。

    オペレーションを分析していくうえで、
    プロダクトの特性に応じて業務プロセスが異なることを
    縦横のマトリクスで表現jしていきます。

    ここまでのマトリクスは基本的な業務プロセスのパターン。

    各社のビジネス事情により異なりますが、
    さらに下記の観点からマトリクスを発展させていきます。
    ・キャンセル・返品
    ・ドロップシップ(仕入先から客先へ納品)
    ・社内受発注
    ・原材料支給・外注加工
    ・輸出(乙仲倉庫への出荷など)
    等々

    こうして出来上がったマトリクスは、
    縦軸がプロダクト別取引パターン別、
    横軸が業務プロセス別におおよそ
    分かれてきます。
     

     



  • 再度、縦軸と横軸を表記します。

    縦軸がプロダクト別取引パターン別、
    横軸が業務プロセス別に分かれる。

    プロダクトはその企業の製品サービスの名称で表現することにします。

    製品A,
    製品B
    サービスC
    、、、、

    個々のプロダクトに対して、通常の業務プロセスと逆流(返品キャンセル)の
    業務プロセスがあります。

    通常の業務プロセスにおいても、プロダクトによって、
    ドロップシップ(仕入先から客先へ納品)
    ・社内受発注
    ・原材料支給・外注加工
    ・輸出(乙仲倉庫への出荷など)
    などの業務が組み込まれます。

    ここから、例えば「受注」は、
    ・顧客からの受注
    ・社内からの受注
    の2つに分かれますし、

    同様に「発注」も
    ・仕入先への発注
    ・社内への発注
    の2つに分かれます。

    このようにして、業務プロセスをさまざまな観点から
    細分化していきます。



  • ここまで繰返し部分も含め、Excelシートにしてお見せすれば、

    視覚から入ることができて理解しやすいと思いますが、

    軸の考え方を重視したい思いから、文章のみで失礼をいたします。



  • ここらで整理をいたします。

    まずプロダクトを生産形態を基準に分けました。
    そのプロダクト別にサプライチェーンの業務プロセス例を考えました。

    下記は購買業務(発注、入荷)は省略しています。
    各生産形態において、受注を境に
    ・受注前の業務は何か
    ・受注後の業務は何かに
    注目してみてください。

    ETO:個別受注生産
     受注 -> 設計 -> 製造 -> 組立 -> 出荷
    MTO:繰り返し受注生産
     設計 -> 受注 -> 製造 -> 組立 -> 出荷

    ATO:受注組立生産
    BTO:受注加工生産
    CTO:受注仕様組立生産
     設計 -> 製造 -> 受注 -> 組立 -> 出荷

    MTS:見込み生産
     設計 -> 製造 -> 組立 -> 受注 -> 出荷



  • 上記の業務プロセスにおいて、受注を境に
    前後の業務に注目しました。

    この境をデカップリング・ポイントといい、
    受注生産と見込み生産の分岐点で、
    在庫を持つタイミングを表します。

    見込み生産は受注前に在庫を持ちます。
    受注前に在庫があれば、納品リードタイムは短くてすみます
    しかし、在庫を保管する場所や人が必要でコストもかかりますし、
    死蔵在庫のリスクもあります。

    一方で、
    受注生産は受注前に在庫を持ちません。
    在庫を持たなければ、在庫を保管する場所や人が必要でコストもかかりませんし、
    死蔵在庫のリスクもありません。
    しかし、納品リードタイムが長くなります。

    このように、納期と在庫にはトレードオフ関係があります。
    あちら立てばこちら立たずです。

    確かにコストや納期の観点も重要なのですが、
    顧客に提供する価値づくりの観点から、
    どのような業務プロセスが最適なのかを
    今一度考えたいところです。



  • 前々回はサプライチェーンの業務プロセスを示しました。
    今回はサプライチェーンに続く会計プロセスを取り上げます。

    「会計プロセスは本フォーラムの範囲外では?」
    こういう疑問が湧いてくると思います。

    でも企業全体最適という視点からは、
    サプライチェーンと会計プロセスが連携していることが重要です。

    注文を受けて納品しても代金を受け取らなければ会社は継続できません。
    注文品が納品されても代金を支払わなければ契約不履行ですね。

    会計数字に実際業務で発生したという裏付けがあることが大切。
    そうでなければ架空計上の疑いも出てきてしまいます。

    経営層にとって、例えば今期いくら儲かっているかを把握したい。
    そのためにはサプライチェーンの各業務プロセスにおける取引※を
    逐一記録しておく必要があります。

    ※取引先(顧客、仕入先、社内各部門)との注文や製品サービス等の
     やり取りを取引と呼びます。

    取引の際に取引日、会計計上日、取引品目、取引単位(個など)、
    取引数量、取引単価、取引金額などを記録していきます。

    ERPソフトにおいては、あらかじめ設定された情報に基づいて、
    取引に必要な仕訳を自動生成し、会計モジュールに送られます。



  • サプライチェーンとエンジニアリングチェーンの融合という観点からは、
    製造原価の仕訳が重要になります。

    ①工数単価マスタに生産資源別の工数単価を予め設定。
    ②仕訳マスタに取引別の仕訳を設定。
    ③エンジニアリングチェーンで工程別生産資源別に工数を入力。
    ④サプライチェーンの原価計算プロセスで工程別生産資源別に工数×単価を計算。
    ➄④と同時に仕訳マスタから原価仕訳を生成
     



  • ここまでの流れを整理します。

    「オペレーション」とは「単純作業」ではなく、
    「事業運営、経営」の意味です。

    ・あるべき「オペレーション」を分析する手順例として、
    1) 「プロダクト(製品・サービス)」別に「
    業務プロセス」を検討します。
    2)
    プロダクト(製品・サービス)」別「取引パターン※」別に業務プロセス」を検討します。
    ※正流(受注→出荷の流れ)のみならず逆流(キャンセル受注→返品入荷の流れ)を含む
    3)
    プロダクト(製品・サービス)」別「取引パターン」別「業務プロセス」別に発生させるべき
     仕訳を検討します。

    「オペレーション」の分析をする場合、
    コストや納期の観点も重要なのですが、顧客に提供する価値づくりの観点から、
    どのような業務プロセスが最適なのかを考える。
    オペレーションはバリューチェーンでもあります。

    ・3)の仕訳については「経理が考えればいい話だろ」と思われると思います。
    仕訳自体はそうなのですが、オペレーションの結果は最終的に会計数字になります。
    オペレーションの評価をする基準の一つとして会計数字は欠かせません。



  • 業務プロセスの軸からみると、プロダクトにより業務プロセスは違えど、
    例えば「受注」「発注」「請求」「入金」「支払」といった業務は共通にある訳です。

    これら共通業務の中味がプロダクト別にまったく違う内容であるならば、
    業務の習熟に時間がかかり非効率なものとなり、誤りも発生しやすくなります。
    顧客ニーズにきめ細かく対応していると言えばもっともらしいですが、
    コスト高を招き、作業誤りから顧客に迷惑をかけることにもなりかねません。

    したがって、できるだけ各業務の標準化が望まれます。
    その中で各プロダクトの顧客提供価値は何なのかを検討すべきだと思います。



  • 逆流

    正流(受注→出荷の流れ)を通常処理とみれば、
    逆流(キャンセル受注→返品入荷の流れ)は例外処理。

    いくらコストがかかる例外処理といっても、
    キャンセル返品をまったく受け付けないという訳にはいかないでしょう。

    顧客のニーズに対応しつつ、コスト高にならないように
    留意しなければなりません。

    そのため、キャンセル返品のような例外処理についても
    できるだけ業務を標準化することが重要だと思います。

    特にモノの流れに注目し、モノが顧客から返ってくることを
    「戻入(れいにゅう、もどしいれ)」という言葉で表しますと、
    戻入には例えば次のような種類があります。

    1)キャンセル返品・・・返金が伴う場合あり
    2)修理返品・・・いったん回収し整備後に顧客へ再納品。
     修理の間、代替品を一時貸し出す場合あり。
     修理品納品と引き換えに代替品を回収する。
    3)レンタル返品・・・レンタル販売における返却。

    正流のみならず逆流の業務処理においても
    顧客へのサービス内容を定義したうえで
    業務を標準化していくことが望まれます。

     



  • 在庫

    前回、逆流にからめてモノの流れに着目しました。
    今回は正流にからめてモノの流れに着目します。

    原材料購買を例にとります。

    まず、発注→入荷→検品→入庫/返品の流れ。
    検品合格なら倉庫へ移動(入庫)、検品不合格なら仕入先へ返品

    上記だけでも、仕入品目ごとに、
    入荷数、検品合格数・検品不合格数、在庫計上数、返品数がとらえられます。

    次に、生産準備として、出庫→生産工程へ移動。
    特定の生産工程における原材料数量が品目ごとにとらえられます。

    生産のために工程ごとに必要な原材料が準備することは欠かせません。
    そのために、モノがどの時点でどこにあるかを把握することはとても重要です。

    これは外注購買にもいえることです。支給品目とその数量をとらえられます。
    あわせて支給品が不良品だったときの取扱いや余剰支給品の取扱いを
    標準化しておきます。


     

     

     

     

     


     

     



  • ここまで「モノ」に着目してお話してきました。

    この後の予定ですが、

    ・「モノ」を保管する「場所」

    ・「生産資源(作業者、設備、治工具等)」

    ・「工程」

    ・「スケジュール」

    ・「原価」

    などについて続けてお話していくつもりです。



  • コメントが深くなりましたので、

    別トピックにいたします。



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